北関東に新快速は必要か

(旧:北関東に新快速はいらない!)3/27訂正


最近、さまざまな鉄道サイトで「首都圏にも新快速を」といった内容のお話をよく見ます。主に中京や関西の新快速のすばらしさにあこがれ、自分の地域もそれにならって高速運転をする普通列車がほしい、といったものが多いようです(違ったらすいません)。それは、私鉄と競合する線が多い南関東なら大いに結構なのですが、私鉄の競合がさほど激しくない北関東(とくに宇都宮・高崎線あたり)の新快速話までもっていくケースがあります。

宇都宮線ユーザーとしてまず思うのですが、今の段階で果たして宇都宮・高崎線に新快速は必要でしょうか。

新快速肯定派は「あるに越したことは無いじゃないか」といいますでしょう。でもそしたら通過される駅の利用客はどうなるでしょうか。

 

1.通過される駅にも利用客は大勢いる

例として宇都宮線の大宮から少し北にある区間、東大宮蓮田の乗車人数の比較をします。ここは撮影地としてある程度有名のようですが、乗車人数を見たときにどちらが上でしょうか。蓮田には快速が停車し、見た目が通勤特急の「おはようとちぎ」「ホームタウンとちぎ」も停まります。だから蓮田のほうが乗車人数が多いかといえば、実はそうでもなく、快速も特急もとまらない東大宮のほうが乗車人数としては上なのです。

この理由としては、沿線に原市団地という大きな団地があるからです。これは首都圏では特殊な事情ではなく、あちらこちらにあります。

快速、新快速ではこのような駅も通過します。この結果、快速の次の普通列車に客が集中します。これは結構厳しいものがあります。

 

2.通勤快速の存在

それでも宇都宮・高崎線には快速以上の普通列車があります。通勤快速です。

しかし通勤快速は高速で輸送するのが目的の新快速とは違いこちらは通勤駅を通過して、通勤をラクにするのが目的です。というわけで運用は平日の朝夕に限ります。

いちおう普通の快速より通過駅は多いので停車駅の人には好評ですが、かわって通過駅の人には非常に不評です。

特に通勤快速がぱっと見2本に1本と、多数運転されている埼京線の通過駅ユーザーに言わせると「通勤快速が多すぎて使いづらい」とのこと。このコメントは一人のものではなく、多数の人の意見です。この人たちは決まって埼京線しか選択肢がなく、乗車チャンネルが減ること、そして列車間隔が開くのを嫌うのです。

ちなみに埼京線の通勤快速の目的は、宇都宮・高崎線の大宮〜東京都心の混雑解消で、朝夕はしょうがないところはあるのですが日中は必要ないです。これも首都圏ではよくあることです。

 

3.では関西や中京は?

では、なぜ関西や中京では新快速で成功できたか。それは競合路線の存在です。関西ではこれに該当するものはたくさんありますし、中京には名鉄があります。他のJRの新幹線もこれに当てはまるものがあります。

それらがあるとなぜ新快速などの高速普通列車が発達するのか・・・。それではこれからシュミレーションをしてみましょう。他社路線A社vsJRで、両社は各駅停車しかない、という設定で行きましょう。

  1. A社がJRに基本的な到達時間で押され気味だ
  2. A社はJRに負けるのを恐れて「急行」という種別を仕立てた
  3. A社が優位に立ちそうなのでJRが対抗して「快速」を仕立てた
  4. JRの快速が意外とすごかったので、A社はさらに「特急」を仕立てて巻き返しを図る
  5. JRはA社の特急で大打撃を受け、さらなる作戦を練る→新快速の開発
  6. JRの新快速の開発を受け、A社が「快速特急」を仕立てて先手を打つ
  7. JRが新快速の実用化に成功

・・・こうして利用客の奪い合いが行われます。もちろん乗車券のみの種別のほかに、特別車両などのオプションもあります(例:阪神のテレビカー)。

そしてこのような優等列車を仕立てるには、ただダイヤ上の問題を解決するだけではいけません。後で説明するような「受け皿」が必要です。

そうして関西や中京ではJRが本気を出し、私鉄を蹴落としているのです。首都圏でも中央線が京王線に、総武線が京成線(通勤に限る)にそれぞれ対抗して特別快速やMAX120キロの高速の快速を運転しているのです(総武線に関してはNEXが直接の原因なのだが)

それでもJR東の私鉄対策列車はどうも関西や中京とくらべて生ぬるいな、と思うでしょう。そうなのです。なぜそうなのか、それは競合私鉄が弱いからです。

自分はどこかJRひいきな所があります。それは関東の私鉄が通勤列車ばっかりでどうも魅力に欠けるからでした。速そうなイメージなんてほとんど皆無でしたし。(京急は除く)

それが関西の私鉄はどうでしょう。「速い・安い・乗りやすい」というイメージが浮かびます。そして元気で活発です。他社に負けじとサービス面を磨きました。その結果、当時の役所的で堅くて長距離思考で通勤に消極的な国鉄は大きく水をあけられ、関西に私鉄王国を築かせてしまったのです。

ところが、国鉄が民営化されて都市輸送に活発になると一転して変わります。国鉄時代にすでにあった新快速を130%も生かし、あっという間に私鉄を追い抜き、惜しまず130キロ運転を始めました。

”惜しまず”という表現をしましたが、JR西としては”惜しまなくてはならなかった状況”でした。自社で一番稼げるところが私鉄王国と言われ、どうしても私鉄に勝たなくてはなりませんでした。

そして努力の末、JR西は自社テリトリーを奪い返し、他社を苦しめることに成功しました。

これは関西の私鉄が活発だったが故のドラマで、また中京でもJRと名鉄で同じような関係があったからこその話です。だから首都圏で新快速等を走らせようとするならば、まず競争の発生や活発化が必要なのです。


続きます 

"旅始駅〜鉄道旅行のターミナル〜"was written by 209-0